自主調査企画 第2回

 

 

【注目商品 コンシューマー・レポート 2018】
だれが買ってる?なぜ売れている?
マーケター心がザワつく商品・サービス

50周年プロジェクトの1つとしてオリジナル調査を企画。
創業当時のフロンティア精神を今に受け継ぎ、「明日のマーケティングに役立つ情報」を発信していきます。

コンシューマー・レポートとして自主調査を実施するにあたり何をテーマとするか、「2018年の今、注目すべき商品・サービス」を探すブレストからスタート。

・生活者としての自分が「気になる、知りたい、面白そう」と感じる商品・サービスは?
・今後の兆しが発見できる、未来を占うような商品・サービスは?
・リサーチャーとして研究してみたい、チャレンジしたい分野は?

そんな切り口で、プロジェクト・メンバーそれぞれが気になるテーマを持ち寄ってみました。

スマートスピーカーで生活はどう変わるのか

今日の天気以外に質問ある?スマートスピーカー

 Google Home、Amazon Echo、LINE Clovaなど様々な製品が登場している「スマートスピーカー(AIスピーカー)」。今年に入ったあたりから周囲でも「買った」という声をよく聞くようになり、日本でも急速に普及してきている印象です。

CMやイメージ動画ではこれ一つで生活が圧倒的に便利になる夢のような世界が描かれているのですが、日本ではまだ対応する家電が少ないこともあり、実際の用途は限られているかもしれません。様々な生活シーンで使いこなしている人と、とりあえず買ってはみたものの音楽再生や天気予報しか聞いていない人など、使い方のギャップも大きそうです。

スマートスピーカースマートスピーカーの画期的な点は、話しかけるだけで使える、ITリテラシーの高くない人でも使えるというところ。「手を使わずに家電スイッチのオンオフや買い物ができる」というポイントに着目すれば、パソコンやスマホの操作が難しい状況にある人、例えば高齢者や視覚障碍者などの生活が劇的に便利になるかもしれません。

ドローン実際に飛んでいるのを見たことがない、ドローン

もう一つテクノロジー関連で気になる商品として挙がった「ドローン」。産業分野で浸透してきたドローンですが、最近は家電量販店で1万円を切る商品もたくさん売られています。しかしこれ、誰がなんの目的で購入しているのか、「楽しい」以外に何か価値があるのか、気になるところです。

ちなみにJMA社員の中で見つけたドローン所有者に購入理由を尋ねたところ、「上空から自分の家を撮影してニンマリしたかった」という微妙な回答でした。

「食べること」に対する新しい価値観

完全栄養食品「食べる行為」が必要なくなる?完全栄養食品

食事をする時間がない、でもバランスよく栄養を摂って健康を維持したい人に向けた「完全栄養食品(完全食)」、「日経トレンディ2018年ヒット予測ランキング」にもランク入りした話題の商品です。

仕事や趣味に没頭したい、何かに夢中になって食事も忘れるようなときに、手軽に1食分の栄養を摂れるというのがコンセプト。食べる時間を短縮することで、日常生活を効率化するのだとか。

「食べること」に対する新しい価値観

JMAは食品・飲料カテゴリーのプロジェクトに数多く関わっていることもあり、社員の多くは飲むこと・食べることが大好き。どんなに忙しくても食事は楽しみ、逆に忙しくストレスが多い毎日だからこ食べることの幸せを感じたい。そんな私達にとって「食べるという行為自体を省く」という発想は衝撃でした。

食品・飲料周りの仮説を立てるとき、「食は楽しく豊かなものであり、食べる時間は幸せな時間」という前提で考えています。しかしそうではない価値観があるとしたら、まったく違うアプローチ方法が必要かもしれません。

この商品「寝食を忘れて仕事に集中するエグゼクティブ、エンジニアやクリエイター、ゲーマーなどインドア趣味の人がターゲット」とのことですが、正直ちょっと疑問。実際はどんなプロフィールの人が買っているのか気になります。

ミサイルも怖くない核シェルター、
自然災害に強い発泡スチロールハウス

発泡スチロールのドームハウス地震に強いと注目された、発泡スチロールのドームハウス

朝鮮半島情勢のニュースが増える中、日本でも関心が高まってきたと聞く「核シェルター」。家庭用核シェルター販売会社によると、2017年に問い合わせや注文が急増したとか。核戦争後に1人生き残ってどうするのだろうと純粋に疑問も感じますが、国際情勢が不安定になるとこういった意外な商品・サービスが関心を集めるかもしれません。

まったく別の角度から安全性を謳うのが「発泡スチロールのドームハウス」2016年の熊本地震で、阿蘇にあるドームハウスの宿泊施設が倒壊ゼロだったことから大きな注目を浴びました。特殊発泡スチロール製でシンプルな構造のため、地震だけでなく台風や積雪にも強いとのこと。自然災害の多い日本では特に、リスクに備える新しい暮らし方のヒントが見つかりそうです。

毎日渋谷を歩いていて、気になること

渋谷渋谷の街でUBER eatsの配達員をよく見かけるようになってきました。注文する側にとって便利なサービスというだけでなく、隙間時間を利用するという働き方としても新しい形です。

話題になっている一方で、利用経験者はどのくらいいるのか、どういった目的・シーンで利用されているのかなど、実態が謎の部分もあります。「まったく見知らぬ素人に配達してもらうこと」に対する不安や抵抗感はないのかも気になるところです。

その他、候補に挙がった
商品・サービス、アプローチ方法など…

《暮らす》

バイオエタノール暖炉」
エコロジーな燃料で暖炉の雰囲気を味わえる。AIスピーカーやIoT家電などテクノロジー化が進み、どんどん無機質になる家の中に、ふたたび「火のぬくもり」が求められるのではないか。

「リビングラボ」
調査手法のアイデアとして、人の暮らしを長期的に追いかける実験。一軒の家でいろいろな商品を使ってもらい、年単位で観察を続けることで、意識や生活の変化を捉えてみたい。

《遊ぶ》

「ナイトタイムエコノミー」 
 
インバウンド需要という点からも注目される夜の経済活動、渋谷はその最前線。でも終電があるし、夜は寝た方がいい気もする。

eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」  
 
アメリカや韓国など海外では人気があり、アジア大会の競技にも採用された。日本でも参加者が増えれば “スポーツの概念”が大きく変わりそう。

「カワウソオーナー」
 コツメカワウソをペットとして飼っている人がいる。かわいい。しかし流行で飼う人が増えると、将来池の水を抜いて駆除されたりするかも。

 

《買う》

「ビットコイン(仮想通貨)
 投資目的ではなく、店頭で買い物に使っている人を見かける。これから仮想通貨はどんな方向に向かっていくのだろうか。

amazonダッシュボタン」
家庭の中のどこに置かれて、いつ、どんな使い方をされているのか。このボタン1つによって買い物行動がどう変化するのか知りたい。

「パパ活」
渋谷を歩いていると、それらしき人々をかなり頻繁に見かける。ビジネスとしても新しいコミュニケーションの形としても興味深い。

この先消える職業、残る職業は?

「人間にしかできないこと」はなくなっても、「人間にやって欲しいこと」は残る「人間にしかできないこと」はなくなっても、「人間にやって欲しいこと」は残る

今ヒットしているもの、それをヒントに新しい商品やサービスを開発するとしたらどんなものが考えられるか、10年後20年後に人と社会はどのような方向に進んでいくのか・・・そんな議論を進めるうちに、話題は「働くこと」へと広がりました。

「人間にしかできないこと」はなくなっても、「人間にやって欲しいこと」は残るこれから技術革新が進めば、ロボットやAIにとって代わられ、消えてなくなる職業も多いと言われています。一方、できる・できないではなく「人間に対応して欲しい」こともあるはず。どんなに自動運転の技術が進んでも無人運転のバスには乗りたくないという人はいますし、まったく人と関わらずにサービスを受けられる社会が嬉しいかといえば、そうとも限らない気がします。

AIは目の前にある現象や過去のデータを分析することは得意でも、今ここにないもの=未来を想像しながら主観も入れて「解釈」し、新しいことを創造することは苦手なようです。

次の50年、マーケティング・リサーチは「人間にやって欲しい」「人間がやった方が楽しい」と感じられる仕事になれるでしょうか…。


述べ4時間を超えるディスカッションの結果、テーマは以下の2つに決定。

「AIスピーカー」
人の生活全体に関与しており、今までにない価値観・ライフスタイルを創りだす可能性のある商品。AIスピーカーを核に生まれる新たな生活シーンやニーズについて考察、今後拡大するシニア・介護市場なども視野に入れて研究する。

「完全栄養食品」
「食べることが面倒、食べる時間がもったいない」という気持ちの背景にあるものは何か、またそのような人は今後増えるのか。食に関わる価値観変化の予兆を探り、新しいコンセプト開発のヒントになるようなトレンドを発見する。

  • 次回より調査結果をレポートいたします。引き続き、どうぞご注目下さい。